太陽からの質量放出とストリーマーの関係

堀 久仁子、Culhane, L.(Mullard Space Science Lab.)、国立天文台野辺山電波ヘリオグラフチーム

太陽からの突発的な質量放出現象 Coronal Mass Ejection (CME)は、太陽から惑星間空間に向かって伸びたストリーマーに沿って、その根本にあった磁気フラックスロープがストリーマーを乱しつつ飛んでいく過程であると、これまで一般に考えられてきた(例えば Low 1996)。しかし、SoHO衛星搭載の白色光コロナグラフLASCOによる太陽周辺の広視野観測より、Subramanian et al. (1999)は、375例のCME中63%が既存のストリーマーと緯度的に重なるものの、うち46%はストリーマーを乱すこと無く飛んでいったと報告している。空間的奥行きがわからない観測に基づいて、CMEとコロナの大規模磁場構造の関係を議論するのは困難であるが、CMEの正体を知る上でこの報告は重要と思われる。太陽からの質量放出において、ストリーマーはどのような役割を果たすのだろうか。

我々はこれまで、CMEのコアを成すと考えられているプロミネンスの放出現象について、国立天文台野辺山の電波ヘリオグラフ(NoRH)画像を用いてその統計的特徴を調べてきた。NoRHによる太陽面(彩層からコロナ)のマイクロ波観測は、コロナグラフと異なり、放出物をその形成過程から連続的に追える利点がある。その結果、プロミネンスの放出方向は無秩序でなく、ストリーマーの根本があると予想される緯度において、ストリーマーに沿って放出(または活性化)される傾向があることを確認した(Hori 2000)。マイクロ波はエネルギー解放の時間発展を知る目安となるため、プロミネンス近辺のマイクロ波輝度変化と、太陽半径の数倍の高さにおけるLASCO画像のシノプティックマップを比較することで、放出物(プロミネンス)とその上空のストリーマーの因果関係を調べることが可能である。講演では、質量放出におけるストリーマーの役割について、これらの解析結果をもとに議論する。