硬いスペクトルをもつimpulsiveフレアにおける加速電子の振る舞い

中島 弘、横山 央明、柴崎 清登、下条 圭美 (国立天文台野辺山)

1999年12月28日 00:43 UTに、太陽面の西側(N23,W47; AR8806)で発生したM4.5のフレアは、短い継続時間(〜5分)と硬いスペクトルをもつ、強い電波と硬X線放射に伴われた。電波ヘリオグラフ、ようこう衛星、SOHO衛星からのデータを使って、加速電子(非熱的電子)の振る舞いを調べ、以下のような結論を得た。

(1) Total flux のスペクトル: 硬X線はsoft-hard-soft の傾向を示し、光学的に薄い17GHzと35GHzのデータから求めたマイクロ波のスペクトルは、soft-hard-harder を示す。ピーク近辺のマイクロ波から求めた電子スペクトル指数は、硬X線(M2とHバンドを使用)から求めた電子スペクトル指数とほとんど同じで、加速電子のほとんどが磁気ループの足元の彩層に突入するというprecipitation model で説明できるようである。

(2) 硬X線像には、磁気中性線を挟んで、3つのfootpoint sourceが確認される。マイクロ波は、一対の硬X線footpoint sourceを結ぶループの一部に沿って分布しているようである。 軟X線像には、フレアの立ち上がり時に3つの硬X線ソースにほぼ対応した軟X線ソースが存在し、フレアのピークでは、最も明るい軟X線源は硬X線ソースのやや上方に移動する。

(3) 17GHzと34GHzのフレア画像からフレア各部分のスペクトルを求めると、強い磁場から弱い磁場に向かってスペクトル指数が硬くなる傾向を示す、スペクトルの空間構造が見られる。これは、加速電子のスペクトルが相対論的電子にまでのびていることを示しているようである。

(4) マイクロ像には、主なフレア領域から3分角ほど離れた磁場の強いところに別の非熱的マイクロ波ソースが観測され、軟らかいマイクロ波スペクトルを示す。