プロミネンス上昇と粒子加速

柴崎清登(国立天文台野辺山)

活動領域AR8731(N18W49)で1999年10月20日 0556UTに発生したMクラスフレアは、フィラメント上昇によって引き起こされたアーケード型フレアであり、継続時間が3時間と、典型的なLDEであった。この活動領域は「フレア直前の研究」の共同観測のターゲットであり、TRACEとYOHKOH/SXTは高速撮像を行っていた。野辺山電波ヘリオグラフも立上りの部分を観測することができた。TRACEは主に195\AA の観測ではあるが、低温物質による吸収のため、フィラメントの観測が可能である。このフレアは様々な興味ある現象を含んでいるが、ここでは高エネルギー粒子の生成に関る部分について報告する。

AR8731には、活動領域を二分する長い(2分角以上)フィラメントが北東から南西に伸びており、南西端は黒点の半暗部まで達していた。このフィラメントが0550UT頃上昇を始め、数分後に、北東端付近でフィラメントと平行でフィラメントの両側に明るい2本のリボンが、フィラメントの北東と南西の端には輝点が観測された。この南西端の半暗部内の輝点に対応(時間、場所共に)して、17GHz電波で輝点が現われ、激しい時間変化を示した。34GHzではこの電波源は観測されず、比較的低エネルギーに加速された電子が強い黒点磁場によって傾きの急な周波数スペクトルを持つ電波を放射したと思われる。17GHzの激しい強度変化は約15分間継続した。YOHKOH/HXTではLチャンネル以外はほとんどカウントがないことからも、加速された粒子のエネルギーが低かったことを示している。

フィラメントの上昇に伴ってリボンの間隔が拡がり、南西方向にも伸びている。このことから、今まで考えられていたように、いったん上方に開いた磁力線が次々に再結合するためにリボンの間隔が拡がるのではないことがわかる。よって再結合に伴って発生した衝撃波(ファーストショックやスローショック)によって粒子が加速されるのではない。プロミネンスの上昇とそれを跨いでいるアーケード状の磁場の相互作用がリボン構造やプロミネンスの両端の輝点の発生の原因と思われる。相互作用のモデルとして交換型不安定(バルーン不安定)を提案したい。