電波ヘリオグラフ2周波光学系改修ーI(概要)

○ 中島 弘、川島進、齋藤泰文、関口英昭、篠原徳之(国立天文台)、鷹野敏明(千葉大工)

電波ヘリオグラフは、1991年6月から17GHz一周波による観測を始め、1995年からは部分FSS(周波数選択膜)型の副鏡を使った二周波(17、34GHz)による観測を始めた。二周波観測は、フレア領域のスペクトルマップを合成する手段として有効であり、新たな観測成果につながりつつある。しかしながら、これまでの2周波光学系には、(1) 34GHzの素子アンテナビームが対称でないこと、(2)セラミック副鏡の一部にひび割れがみられること、の問題点があった。今回、これらの欠点を取り除くため、(a) 副鏡の全面に周波数選択膜を施すことにより、アンテナビームを対称にし、(b) 副鏡取付金具を新たに設計しひび割れ防止をはかった。これらの改修は、観測を中断することなく昨年10月にほぼ完了した。主な改修点の概要について報告する。

・全面FSS型の副鏡本体の製作: 33.8 GHzの挿入損失の仕様を1.5 dB (目標 1.0 dB)として製作した結果、大部分は1.0 dB程度以下となった。この副鏡を搭載したアンテナの34GHzビームは対称となった。17GHzにおける交差偏波特性(円偏波)は、主鏡込の総合特性として20 dB以上を達成することができた。

・副鏡本体のアンテナへの取付方法: 温度変化や凍結によって強い引っ張り応力がセラミック副鏡本体にかからないように、アルミナの強い圧縮特性(引っ張り強度の約一桁上)を利用した取付方法を工夫した。温度試験もクリアした。

この準備の上に、電波ヘリオグラフは、本年3月に打ち上げられる予定のX、γ線太陽観測衛星(NASAのHESSI衛星)との共同観測を待ち望んでいる。