電波および硬X線でとらえるフレアの非熱的粒子加速

---98年11月10日のフレアの多波長解析

○浅井 歩、磯部 洋明(京大理)、森本 太郎(花山天文台)、下条 圭美、横山 央明、中島 弘、柴崎 清登(国立天文台野辺山)

太陽フレアの発生機構は、最近の衛星観測および地上観測の発達により明らかにされつつあるが、フレアで発生する非熱的粒子の加速機構については未知の部分が多い。我々は、1998年11月10日にNOAA 8375で起きたC7フレアを、電波(野辺山電波ヘリオグラフ・偏波計)、X線(ようこう/SXT・HXT)、磁場(SOHO/MDI)の多波長で解析し、フレアループの構造および物理量と粒子加速の関係について調べた。

このフレアでは、硬X線と17GHzで4つのピークが観測された。各放射源の空間分布を述べると、17GHzと34GHzの電波像ではどちらも南北に二つあり、軟X線像ではそれらをつなぐフェイントなループが見られた。一方硬X線源は、南側の電波源にしか見られず、軟X線像で見たフレアループとほぼ同位置にあった。これらの空間分布はピーク毎でそれほど変化しなかった。

2つめのピークに注目した結果、北側の17GHz電波源と南側の硬X線源の強度が約7秒の周期で振動している現象が見られた。また、電波の強度変化は硬X線のそれに比べ0.5秒から1秒程度の遅れていることがわかった。この位相のずれより、硬X線や電波を放射している非熱的電子が南側の電波源付近で加速され、北側の電波源や硬X線源に飛んで行ったと推測される。

さらに、硬X線源や南側の電波源の近くにあるフレアループについて、軟X線画像の解析により大きさ・温度および密度を導出し、光球磁場分布からポテンシャルフィールドを仮定してループ頂上の磁場強度を計算した。その結果、フレアループ内の音速やアルフベン速度を求めることができ、そのアルフベンタイムスケールと先の振動周期(約7秒)が一致することがわかった。これにより、電磁流体的な周期で加速機構(加速効率)または加速粒子の伝搬が影響を受けていると考えられる。