M36a

マイクロ波で見える非熱的フレアループと硬X線源の関係

○下条圭美 (国立天文台・野辺山太陽電波観測所)

H\alpha線でtwo-ribbonが見え、軟X線や極紫外線でアーケード構造が見える比較的大きな太陽フレアでも、アーケード内の一部のループにのみ非熱的粒子の多くが注入されている事が、ようこう/硬X線望遠鏡(HXT)の観測等により、わかってきている。これは、フレアの発生している領域全体で一様に粒子加速が行われているわけではなく、一部の領域でのみ粒子加速が激しく行われている事を示唆している。このような非熱的粒子(電子)の非一様分布は、硬X線だけでなくマイクロ波でも見る事ができる。

2001年4月3日と2002年4月21日におきたXクラスフレアは、双方ともリム上で発生し、SOHO/EITやTRACEでアーケード構造を見る事ができるイベントであった。このフレアを野辺山電波ヘリオグラフの34GHz電波像でみると、一部のループのみ電波で増光しており、17GHz画像も使ったスペクトル解析により、これらのループは非熱的電子によって増光している事がわかった。 これらの電波画像と、2001年のイベントではHXTで撮像された硬X線画像、2002年のイベントではHESSI衛星で撮像された硬X線画像と比較して、電波で見えた非熱的ループと硬X線源の関係を調べた。その結果、 2本の非熱的ループが見えている場合、両方の足元に25〜100 keVで硬X線源が確認できるが、34GHzで暗い方のループの足元の硬X線源の方が明るい事がわかった。一方、2本のループ上空には3〜25 keVの広がった硬X線源が存在しており、こちらも34GHzで暗い方のループ上空に硬X線源の重心が位置している事がわかった。もし上空の硬X線源が超高温の熱的プラズマを示しているとすれば、光球磁場の比較的弱い領域の上空に超高温プラズマが生成される事を示している。