M33a

プロミネンスの上昇と加熱

○下条圭美(国立天文台)

プロミネンス(フィラメント)放出現象の初期フェイズにおいて、プロミネンスが上昇しながら加熱をうけている事が、Hanaoka & Shinkawa (1999)で示されている。また、SOHO/EITやTRACEによる極紫外線観測により、上昇中のプロミネンスの一部が100万度程度に相当する波長で輝き、構造や上昇速度の変化が起きている事が観測されている。このプロミネンスの加熱と加速の関係を調べるため、速度による感度変化に鈍感な野辺山ヘリオグラフ(NoRH)とSOHO/EITの同時観測を解析した。

解析では、NoRHで観測されたプロミネンスの中でループ状の構造を持つイベントを選びだし、上昇速度の測定を行った。ループ状のイベントを選んでいるのは、プロミネンスの各部分での速度と他波長での構造の関係を調べるためである。2001年春季年会(下条, 2001/M08a)にて1イベントの解析例を紹介したが、今回は計4イベントを解析し、プロミネンスの加速と加熱の関係において以下のような、一般的な特徴があることがわかった。1) EIT画像でプロミネンスが光り出す約10分前からプロミネンスが減速している。2) EITでの増光は局所的で、プロミネンス内の一部の磁束管だけが加熱されているように見える。3)EIT画像で増光した部分からプロミネンス物質が落下している。プロミネンスの減速は、プロミネンスの磁場構造がコロナ中の磁場構造とぶつかってcurrentsheetが形成されている事を示し、EIT画像で増光した部分からプロミネンス物質が落下する状況は、プロミネンスから光球・彩層へのパスが磁気エネルギーの開放を伴って新たに形成された事を意味している。これらの事から、プロミネンスの上昇中の加熱は、プロミネンスの磁場構造とコロナの磁場構造との磁気リコネクションがエネルギー源である事が予想される。