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太陽活動1サイクルにわたる黒点暗部振動周波数の安定性

○柴崎 清登(国立天文台野辺山)

 野辺山電波へリオグラフの17GHzでは磁気共鳴放射により黒点暗部が明るく観測される。以前の研究により、1)この明るさが約3分で振動しており、2)振動の原因が、下層で発生した音波が磁気共鳴層(2000ガウスの等磁場面)を通って上方に伝播する際の密度と温度の変動のためであること、3)3分周期の音波は、極低温域の大気の自由振動であり、周期は温度によって決まること、を明らかにした。つまり、暗部振動の周波数は黒点暗部内の極低温域の温度計として利用できる。

 この温度計を用いて、太陽活動1サイクルにわたる黒点の温度変化を測定した。電波へリオグラフはほぼ1太陽活動サイクル観測しており、そのデータを用いれば測定が可能である。極小期を除く期間、一様な時間間隔で黒点を選び出し合計29個の黒点暗部振動を解析した。使用したデータは、長い基線長の平均相関振幅の時系列である。相関振幅はコンパクトな電波源の時間変動を非常に感度良くとらえることができるので、フレアも非常に感度良くとらえられる。それをさけるために、フレアの影響の少ない日を選び、1つの黒点について、1日の連続した振動データを解析した。相関値の時系列をフーリエ変換し、そのパワースペクトルを求めた。平均的な周波数を求めるために、移動平均のピーク値を求めた。その結果、11年にわたって、非常に安定した5.7mHzという値が得られた。これは黒点暗部内の極低温域が11年にわたって4,400 Kという非常に安定した温度であることを示している。一方、黒点暗部内の明るさが太陽活動の位相とともに系統的に変動し、これを温度に換算すると活動期の最初から最後にかけて300 K上昇するという光学観測結果があるが、今回の結果はこれを支持しない。