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マイクロ波バースト強度のゆらぎ

○柴崎清登(国立天文台野辺山太陽電波観測所)

 太陽フレアにともなって高エネルギー電子がつくられ、それらが磁場に巻きついてマイクロ波を放射したり、密度の高い下層大気と衝突して硬X線を放射したりする。しかし、どういうメカニズムによってこれらの高エネルギー電子が加速されているのか、いまだにはっきりしていない。本研究においては、観測されたマイクロ波電波強度変動の性質を解析し、粒子加速に関する考察を行う。

 今までのマイクロ波電波強度変動の研究は、準周期的成分の検出とその解釈が主なものである。本研究においては、フレア継続時間のタイムスケールから、観測装置の時間分解能タイムスケールにわたる、全体の性質について検討する。そのために電波強度の時系列のパワースペクトルを利用する。解析には、野辺山電波ヘリオグラフの17GHzにおける相関値を用いる。ここでいう相関値とは、長い基線長の干渉計対からの相関値の振幅の2乗平均で、コンパクトな電波源の電波フラックスを代表する量である。時間分解能は0.1秒または1秒、フレアの継続時間はほぼ1000秒であり、3桁程度の周波数範囲がカバーできる。解析の結果、多くのイベントにおいて、指数が−2 〜−3の冪乗となった。時系列のパワースペクトルは自己相関関数のフーリェ変換に一致する。パワースペクトルが一定(白色ノイズ)の場合、そのフーリェ変換である自己相関関数はデルタ関数となり、時間をずらすと相関がなくなるということを示しており、各時刻での強度が独立であることを示す。そうでない場合は、相関があるということになる。また、冪乗のスペクトルは、特徴的な周波数(1/時間)がないということを示す。加速されたそれぞれの高エネルギー電子が磁場に巻きついてジャイロシンクロトロン放射をし、その放射は非干渉性(インコヒーレント)である。これらが合成された結果が相関を持つということは、粒子加速が時間的・空間的にゆらいでおり、そのゆらぎが特徴的サイズを持たないということを示唆している。