三鷹太陽多波長データ解析研究会
グループ1結果報告
[当初の目的]
NOAA0306は三鷹のHα観測で何日にもわたってリカレントにサージを起こして
いることがわかっている特徴的な領域で、このような領域では、磁場の変遷の
過程でサージやジェットを起こしやすい構造が維持されていると考えられる。
MDI・ASPの磁場及びTRACE・CDSのデータをそろっているため、サージやジェッ
トといったtransient eventを起こす磁場の条件やコロナのプラズマの状況を
多数の例から調べることができるのではないかと考えられる。CDSは日本時間
の夜間の観測が中心であるが、夕方に観測されたサージでは近い時間のCDSの
観測がある。
[黒点周囲の状況]
図1に示したように大きな先行黒点があり、コロナの画像では黒点本体を囲む
円周上に明るい領域が存在する。ムービーで見ると、moving magnetic
featureが黒点からこの円周に向かって絶えず放出されており、この円周上で
MMFが関連したエネルギー解放が起こっていることを示している。
図1. 上はTRACE 1600Åの画像。下はTRACE 171Åの画像にumbraのコントアを
重ねたもの。
[サージ及びジェット]
三鷹のフレア望遠鏡によるHα観測では、とくに3月11日と12日に同じ場所から
繰り返しサージが放出される現象がドップラーグラムで顕著に見られる。
・3月11日のHαムービーとHαドップラーグラムムービー
・3月12日のHαムービーとHαドップラーグラムムービー
ドップラーグラムムービーは位置合わせをしていないquick look版である。
TRACEは171Åの画像が11日・12日はわずかしか撮られていないためHαとの直
接比較が難しいが、13日以降は多数の画像があり、ムービーをみると13日の
10-13時、17-19時、21-24時や14日の05-07時に繰り返し同じ場所からジェット
が放出されるのが見られる他、15日20時〜16日01時には大きなジェットが
繰り返し起こる特徴的な現象が起こっている。
[磁場との比較]
磁場のデータではMMFが多数見られるが、これらの振る舞いとサージ・ジェッ
トを比較すると、その関係がうかがえる。
例えば、図2のように3月11日のはじめ頃に起こったサージは西よりやや南に出
ているが、これに対応するnegative polarityのMMFが存在する。
図2. 左からサージのHα画像及びドップラーグラム、近い時刻のMDIマグネト
グラム。
また、図3のように、同じ3月11日のより後の時間には、やや北側を起点とするサージが西側
に出ているが、やはりこれに対応するnegative polarityのMMFが現れている。
図3. 左からサージのHα画像及びドップラーグラム、近い時刻のMDIマグネト
グラム。
さらに、図4の15日の大規模なジェットでもやはり対応するMMF(というには巨
大だが)が見られる。
図4. 左からTRACE 171のジェットの画像、近い時刻のMDIマグネト
グラム。
これらの共通点として、negative polarityのMMFと、さらに外側のpositive
polarityが衝突してcancellationを起こしている最中にサージやジェットを起
こしている可能性があることである。磁場の変化を定量的に追跡することで確
認したい。同じように見えるMMFでもサージ・ジェットを起こすものも起こさ
ないものもあるが、この領域においては多数のサージ・ジェット及びMMFが観
測されているため、サージ・ジェットを起こす条件を磁場及びプラズマ診断か
ら解明するのが今後のテーマとなる。