太陽フレアにおけるプラズモイド(バルーン)

○柴崎 清登(国立天文台野辺山)

太陽フレアの初相において、プラズマがループやループアーケードの頂上付近から上空に向かって噴出する現象が観測される。この現象は、ループやアーケード上空にあると思われている電流層で磁気再結合が起こり、つながった磁力線がその張力によってプラズマを引き上げていると解釈されてきた。この解釈に基づくと、磁気再結合の発生場所はループやアーケードの上面に接している必要があり、非常に不自然な磁場構造を導入しなくてはならない。本研究では、このプラズマ噴出をループのバルーン不安定性によるプラズマ崩壊(high-betadisruption)であると解釈し、その性質と伴う現象について議論する。

磁気ループ中に有限のベータ値を持つプラズマが満たされると、準交換型不安定が発生することが期待される。荷電粒子が熱運動する場合、その旋回中心は磁力線方向に拘束され、外側に向かって遠心力が働く。磁力線に沿ったプラズマの流れがある場合も同様である。磁気ループの曲率が小さかったり、磁力線に沿った速度が大きい場合には遠心力は重力を上回り、上向きに力が働くことになる。これを磁場の張力がささえることになり、交換型不安定性が発生する。両端を固定した磁場に有限のベータ値を持つプラズマが満たされている場合、爆発的なエネルギー解放 "detonation" が発生することが知られている。

このシナリオを太陽表面の磁気ループに適用すると、ある程度以上のベータ値を持つプラズマが詰まった磁気ループでは、このような不安定性が発生することが予想され、プラズマがループの頂上(曲率の一番小さい場所)から外に向かって放出されることになる。それに伴って、さまざまなエネルギー解放が発生し、太陽フレアそのものとなる。磁力線に沿った高速流がある場合も同様である。また、フィラメントが上昇している時に、それをまたぐアーケード状の磁力線群に衝突すると上向きの加速度が発生し、同様な現象が期待される。