ようこう/SXTによるDifferential Emission Measureの評価

○下条圭美、鹿野良平、原 弘久(国立天文台)

Differential Emission Measure (DEM)は、コロナにおける加熱過程を探る上で非常に重要な情報をもたらす。我々は、ようこう搭載の軟X線望遠鏡(SXT)により1991年11月18日に観測された活動領域NOAA6919のデータを使いDEMの評価を試みた。この観測ではSXTが持つ全てのX線フィルターによって撮像がなされており、filter-ratio法による温度解析により、5MKの高温プラズマが活動領域中心部だけでなくX線強度が弱い領域においても存在しているという報告がなされている(Hara et al., 1992)。 我々は、このSXTの持つ全X線フィルターでの観測データを基に、Withbroe-Sylwester法(Sylwester et al. 1980)を用い、2MKから20MKの温度域でDEMの評価を行った。なお、スペクトルデータとしてCHIANTデータベースを用いている。

活動領域中心部のX線強度変化が少ないループのDEMを評価した結果、3MKから10MKにかけてpower-law的な分布(Index 〜-4.5)でEMが減少していることがわかった。この分布は、SOHO/CDSやSERTSによるEUVライン観測で得られた、2MK 〜3MKあたりにピークを持つ活動領域のDEM分布と継げることができると思われる。

SXTでDEMを評価できる最大の利点は、DEMの時間変化や空間分布を得ることができる点にある。我々は同じ活動領域内で発生しているTransient Brightening(TB)におけるDEM分布の時間変化も評価した。ただし、X線強度の時間変化が激しいため、X線強度が最大になった時間のDEMを評価することはできず、Decay PhaseのDEMとTB以前のDEMを比較した。その結果、DecayPhaseのDEM分布は、TB以前の分布に対して全温度域でEMが増加してるだけでなく、特に高温成分(> 4MK)が増加していることがわかった。これは、TB時に4MK以上の高温プラズマが生成された事を示している。