CMEソースリージョンの構造・2000年2月26--27日のCME
花岡 庸一郎(国立天文台)
SOHOのLASCOによるCMEの詳細な観測はCMEについて大きく理解が進んだかのような印象を与えるが、実際にはCMEのソースリージョンの構造すなわちCMEのプラズマがもともとどこにあったのか、エラプションを起こした磁場構造はどの範囲のどのようなものなのか、というそもそもエラプションを起こすのに本質的な部分の情報については必ずしもよくわかっていない。衛星によるすぐれたコロナ画像データをもってしてもCMEソースリージョンの希薄なコロナの構造はなかなか見えにくいのが実情である。
その中で、2000年2月26--27日に太陽の東北部分のリム近くで起こったフィラメントエラプション/CMEは、その構造をきわめてよく観測できた例である。このイベントではプロミネンスはリム近くとはいえディスク上に見えており、その構造やその周辺の表面磁場がSOHOのEIT、MDIで観測できた。一方、エラプションを起こしたコロナの部分はリム外に見えている部分が多く、ディスク表面の構造に邪魔されずにようこうSXTやSOHO
EITでその変化が観測できた。その結果以下のことが明らかになっている。
(1) フィラメントについては、Fe XIIの画像でエラプション前からヘリカルな構造が見られるが、エラプションの間このねじれがほぼ保たれ、さらにSOHOLASCOの観測ではフィラメントが約20太陽半径の距離に達するまで同じように見えている。このことは、フィラメントが、もともと持っていたヘリシティを保存しつつ太陽系空間へ飛び出していっていることを示している。
(2) SXT/EITによるエラプションを起こしたコロナループの観測と表面磁場の情報が同時に得られたことにより、エラプションを起こしたコロナループがどのような磁場構造をしていたかをある程度推定することが可能である。
このCMEのようにリムイベントとディスクイベントの利点を合わせ持ったもののケーススタディは、エラプションの本質を観測にもとづいて理解する上で極めて重要である。