カスプ型フレアの多波長観測II. Decay Phase におけるリコネクションレートの導出
磯部 洋明、森本 太郎、高津 裕通、衛藤 茂、成影 典之、柴田 一成(京大理)、横山 央明、下条 圭美(国立天文台野辺山)
Yohkoh衛星の Soft Xray Telescope(SXT) による観測で発見された太陽フレアのカスプ型構造は、フレアの磁気リコネクションモデルの観測的証拠である。しかし、カスプ型フレアの物理過程にはまだ分かっていないことが多い。特に、decay
phase においてエネルギー解放があるらしいことは以前から知られていたが、定量的な解析はこれまであまりされていなかった。この研究では、1997年5月12日のカスプ型フレアについて、Yohkoh/SXT、飛騨天文台のフレアモニター望遠鏡とドームレス望遠鏡、野辺山の電波ヘリオグラフのデータを解析した。その結果、decay
phase においても rise phase と同程度のエネルギー解放があることが分かった。また、 磁気リコネクションモデルから導かれる関係式\frac{dE_{th}}{dt}=2\frac{B^2}{4\pi}v_{in}L_xL_yv_{in}B_{corona}=v_{foot}B_{foot}を用いれば、観測データからリコネクションインフロー速度v_{in}と、コロナ磁場B_{corona}が得られる。これを用いて、decay
phaseにおけるリコネクションレートの時間変化を求めた。予備的な計算によると、decay phase 初期のリコネクションレートはM_A \approx
0.007となる。また、上の方法でもとめたコロナ磁場強度はB_{corona} \approx 5 \sim 6Gとなり、これはポテンシャル磁場計算の結果
B_{pot} \approx 4 \sim 20Gおよび、野辺山ヘリオグ・偏波データより算出した磁場強度 B_{radio}< 30G ともよく一致した。