マイクロ波バースト強度変動の周波数解析

○柴崎 清登(国立天文台野辺山)

太陽フレアに伴う粒子加速現象は、硬X線やマイクロ波によって観測することができる。加速された電子が下層大気に衝突して硬X線を放射したり、また活動領域の磁場に巻き付いてジャイロシンクロトロン機構によりマイクロ波を放射する(マイクロ波バースト)からである。これらの放射はフレアの初期に発生し、多くの場合大きな振幅の時間変動を伴う。この時間変動は粒子加速自体の時間変動、または、加速された粒子の伝播過程での時間変動と解釈される。よって、この時間変動を解析することによって、フレアにおける粒子加速機構/伝播条件について明らかにすることができる。これを目的として、野辺山電波ヘリオグラフ(NoRH)によって観測された17GHzにおける電波バーストの強度変化を解析した。用いたデータは、画像合成する前の相互相関値である。電波バーストのように空間的広がりの小さい電波源の場合、長いアンテナ基線の相関値は電波強度に比例するので、相互相関値の振幅の平均値の時間変動(「相関時間変動」と呼ぶ)を用いて時系列解析を行なった。

解析を行なったイベントは、西尾等(1997)が画像を用いて解析したインパルシブバーストのうち、非常に弱くて解析できなかった1例を除いた13例である。解析には、50ミリ秒間隔データがある場合はそれを、ない場合は通常の1秒間隔データを用いた。これら13例はすべて比較的振幅の大きな振動を示し、多くの例で特徴的な周波数を持つことがわかった。周波数解析において、特徴的周波数の時間変化をさぐるために、短時間のフーリェ変換によるスペクトログラムを用いた。ガウス型の窓関数の中心を動かしながら、フーリェ変換を行なってパワースペクトルを得ていく方法で、直感的にもわかりやすい。窓関数の半値幅をどう選ぶかはイベント毎に異なり、長くするとスペクトル分解能はよくなるが時間分解能が悪くなり、短くするとその逆となる。この方法によって、相関時間変動の特徴的周波数が時間とともに変化する例が見つかった。求められた特徴的周波数と、画像から求められたフレアの構造との関係について調べ、粒子加速の機構/伝播条件について議論する。また、周波数変動の原因についても検討する。