フレアの多波長解析:1999年8月20日23時06分UTのイベント

○秋田 亨(大院大)、柴崎清登(国立天文台)、山崎高幸(明星大)、勝川行雄(東大)、宮腰剛広(総研大)

フレア現象を異なる波長領域で観測することは、光球からコロナに至る3次元的構造の中で、エネルギー開放現象がどのように行われているかを調べることができ、トータルなフレア機構を解明する上で、大変重要である。本発表では、1999年8月20日23時06分UTに、東のリム付近で起きた比較的大型のフレアについて、国立天文台野辺山の電波ヘリオグラフから、ようこうの硬X線望遠鏡にいたる多波長での観測を利用して解析を試みた結果を紹介する。

このフレアは、活動領域NOAA8673 (S23 E60)の中で起きたもので、GOESクラスはM9.8で、17GHz/34GHzでのピークフラックスは、1873/2200sfuであった。BATSEによる硬X線のタイムプロファイルは、23:05:59から始まり、23:06:15に鋭いピークを迎える典型的なインパルシブフレアを示しているが、その中にも秒単位の大きな変動を伴う複雑な様相が見えている。このピークに至る前後の短時間の間だけ、ようこうHXTの硬X線(Mバンド)イメージでは約20秒角間隔のはっきりした二つ目玉構造が現れており、SXTの軟X線のイメージと比較すると、明らかにループの二つのフットポイントが同様に光っているように見える。しかし、この間、野辺山の17GHzのイメージでは、HXTイメージの南側のフットポイントを中心とした増光が見られるだけである。このことは、マイクロ波の明るさが磁場構造に大きく依存することによることを示唆しており、実際、SOHO衛星のマグネトグラフ(MDI)イメージとの重ね合わせから推測される磁場構造と矛盾しない。また、17GHzの画像には、この時間帯に限ってジェット構造のようなものが見いだされており、興味深いイベントである。