プロミネンス上昇速度と磁場構造の変化
○下条圭美(国立天文台・野辺山)
プロミネンス(フィラメント)放出現象は、フレアおよびCMEと密接に関係する現象である。特にプロミネンスの上昇が磁気エネルギーを開放させるトリガーなのか、それともエネルギー開放の結果なのか議論の分れるところである。
野辺山電波ヘリオグラフ(NoRH)は、非熱的電子が放射する電波を観測するのが主目的の観測装置だが、約1万度の熱放射からの電波にも感度があり、プロミネンスやフィラメントも観測することができる。特にHαによる観測で問題になるラインシフトによる影響が無いので、プロミネンスの上昇速度等の計測に有利な装置である。そこで我々は、NoRHで観測されたプロミネンスの中でループ状の構造を持つイベントを選びだし、上昇速度の測定を行った。ループ状のイベントを選んでいるのは、プロミネンスの各部分での速度と他波長での構造の関係を調べるためである。今回の発表では、これらのイベントの中から2000年8月28日に発生したプロミネンス放出現象の解析結果を発表する。
このプロミネンスの上昇速度の時間変化を見ると、NoRHの視野外に出るまでに3回ほと顕著な加速があることがわかった。その時間の他波長のデータを解析した結果、1回目の加速はHα線で見たプロミネンスの足の一部が消失している時間と一致しており、2回目はSOHO/EIT
195\rm\AAの画像でプロミネンスの南側が増光していた。また3回目の加速では、2回目と同様にEUVでの増光がプロミネンスにそって発生し、電波ではプロミネンス物質がプロミネンスの南側にある活動領域にむかって落下していくのが確認できた。3回ともプロミネンスに関わる磁場構造が変化したために加速したと考えられる。特に2回目と3回目は、プロミネンスが近くのループと磁気リコネクションを起こし、プロミネンスの長さの急激な変化により磁気的平衡状態を崩したために加速が起こったと考えられる。