黒点の衝突によるフレアの発生
○下条圭美(国立天文台・野辺山)
光球でのシア運動によるフレア発生のメカニズムとしては、1本のループが上昇してカレントシートを作るモデルと、2つのループが衝突してカレントシートを作るモデルが提案されている。1999年7月2日に発生したGOESクラスM2のフレアは、SOHO/MDIのデータをフレア発生前半日分を追跡した結果、逆極性の黒点同士が衝突した領域で発生していることがわかった。光球でのシア運動により発生したと思われるこのフレアだが、どのような磁場構造の変化によりフレアを起こしたのか、どちらのモデルに近いのかを調べるため、TRACE/171\rm\AA・1600\rm\AA,
ようこう/SXT・HXT, SOHO/MDI, 野辺山電波ヘリオグラフ(NoRH)のデータを解析した。その結果、以下に述べるフレアの特徴が判明した。1) フレア発生前に磁気中性線上にフィラメントが見られない。2)フレアリボンが3本ある。3)
フレアカーネルから離れた3本目のリボン上にも電波源があり、カーネル上の硬X線源や電波源との時間差を考慮すると、非熱的電子がフレアカーネルから3本目のリボンへ移動したと考えられる。
4) フレアループの他に、軟X線画像でフレア領域を覆うようなアーケイドがフレアと共に出現しており、このアーケイドの足元がフレアカーネルから離れた3本目のリボンに一致する。これらの特徴により、2つのループ(アーケイド)が衝突しカレントシート生成および磁気リコネクションを起こした可能性が高いと考えられる。また、衝突した一方の黒点の運動方向と極性がフレアカーネルの西側にある活動領域の主なる先行黒点と一致していることから、Kurokawa,
et al. (2000)[1]と同様に、ねじれた磁力管の急激な浮上によりフレアが発生した可能性も示唆される。
[1]Kurokawa, et al.:日本天文学会2000年秋季年会 M21a