野辺山電波ヘリオグラフによるフレア非熱電子分布関数べき指数の空間分布についての統計的研究
○横山 央明、中島 弘、柴崎 清登(国立天文台)
太陽フレアの非熱的放射はおもにマイクロ波(>10 GHz)や硬X線(>30 keV)をもちいて調べられてきた。その結果知られている重要な謎のひとつに、「観測スペクトルから推定した非熱電子分布関数べき指数\deltaの値がマイクロ波からのものと硬X線からのものとで異なる」という事実がある。硬X線からもとまる\delta_{HXR}は4--7であるのに対して、マイクロ波のほうは\delta_{\mu}は3-6と一般に硬い(Silva
1999)。この謎に取り組むためにわれわれは野辺山電波ヘリオグラフ(NoRH)をもちいてフレア電波源のスペクトルの空間構造について統計的にしらべた。ようこうによる観測から硬X線ではおもにループ足元付近が光ることがしられている。いっぽう電波では空間分解が不十分で、どの場所がおもに光っているかという観測的な結論はまだない。しかし、より硬いスペクトルが観測されていることから、足元ではなくループ中に閉じ込められて、その経時効果でスペクトルが硬くなった非熱電子からの放射であると予測されている。そこでわれわれは「フレア非熱放射源はループで、その足元と頂上とでスペクトルが異なる」という仮説をたてこれを検証した。NoRHで観測される放射源の多くは、ビームにたいして2--3倍程度しかなく、はっきりとループ構造を見分けることが困難であるので、太陽リム付近で発生したフレアだけを選び出し、リムに近い側をループ頂上であると仮定してスペクトル分布について調べた。全53フレアのうちリム側(ここではループ頂上と仮定)が硬いフレアが25例、逆が4例、それ以外は不明瞭という結果になり上記の仮説が正しいと検証された。