Nobeyama Radioheliograph
野辺山電波ヘリオグラフ 装置に関する詳しい質問集
Q
アンテナ系
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電波ヘリオグラフのアンテナは光学反射望遠鏡とどう違うのか
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アンテナの口径を 80cm とした理由は?
宇宙電波のアンテナに較べて極端に小さいが、それでよいのか
- 太陽全面を常時観測するというが、84台のアンテナは少しずつ異なる方向を向いているのか
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84台のアンテナを一斉に太陽に向けるにはどうするか
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アンテナを 0.2mm の精度で据付ける必要性は?
据付調整機構の役割、調整に要する労力・時間は?
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アンテナを 0.2mm の精度で据付けても、その後動いてしまうのではないか。
例えば地震があったらどうするか
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アンテナの据付誤差を観測から検出できないか。
あるいはズレを補正することはできないか
受信機系(1)
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フロントエンドの役割は? なぜ気象条件の厳しい屋外に受信機の一部を置くのか。
観測棟内に受信機を一括して置けないのか
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太陽の観測になぜ低雑音増幅器を必要とするのか。
また、宇宙電波の受信機のように冷却する必要はないのか
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中央局発信号発生部とフロントエンドの局発信号発生器との役割・関係は?
また、局発信号発生器のうち、第1局発と第2局発の単価が3倍も違うのは何故か
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フロントエンドを温度制御する理由は?
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観測周波数を 17GHz とした理由は?
受信機系(2)
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信号を増幅するのになぜ減衰器が必要なのか。
また半固定減衰器と自動減衰器の2種類必要な理由は何か
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時計の精度はどれだけ必要か?
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ウォルシュ関数パルス発生器とは何か。"84系統"の意味は?
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受信機制御監視部の役割は? どの様な状態を制御・監視するのか?
受信機系(3)
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電波(信号)をディジタル信号に変換する理由は?
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なぜ莫大な数の相関器を要するのか
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LSIに集積化する必要性は?
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強弱の大きい信号を1ビット化してしまうのはなぜか
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データ積分装置の役割およびソフトウェアの内容は?
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高速データ記録装置と計算機(磁気ディスク、光ディスク)との関係は?
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環境監視装置ではどのような環境条件をモニタするのか、またその必要性は?
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主制御監視装置の役割および環境監視装置との違いは?
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ビデオ増幅器はなぜ必要か
伝送系
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ケーブルはなぜ地下に埋めるのか。空中または地上ではいけないのか。
ミリ波干渉計のように共同溝は必要ないか
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なぜ高性能ケーブルを必要とするか
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位相器用ケーブルの長さが、中間周波ケーブルおよび局発信号ケーブルの長さの半分になっている理由は?
- 各種信号の伝送を1本のケーブルで共用できないか
データ収録処理系
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電波ヘリオグラフの出力データ量はどのくらいか。
膨大なデータをどのように記録し、保存するのか
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なぜ実時間で太陽像を処理・出力する必要があるのか
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なぜ高性能の専用計算機を必要とするか。
ヘリオグラフで計算機の果たす役割はなにか
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必要とするソフトウエアの特徴はなにか。
それぞれの役割はなにか。研究者側で作れないか
A
アンテナ系
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1. ヘリオグラフのアンテナは光学反射望遠鏡とどう違うのか。
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下図のようにアンテナの主鏡, 副鏡の役割は基本的に同様である。つまり主鏡で電磁波(光も電波も
電磁波である)を集め、副鏡でそれを受信装置に導く。しかしながら波長が1万倍違うために(光の波長
は 0.5μm 程度であるのに対して、ヘリオグラフで受信する電波の波長は 18mm)受信装置は全く異なる。
光学反射望遠鏡では、焦点面に写真乾板や光検出素子を置いてを撮ることができる。一方、ヘリオグラ
フの場合は、電波をホーンに導き低雑音増幅器で増幅した後、多数のアンテナからの信号を合成し画像
(相関をとり、フーリエ変換して)電波写真を得る。
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2. アンテナの口径を 80cm とした理由は? 宇宙電波のアンテナに較べて極端に小さいが、それでよいのか。
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アンテナの口径は視野の広さに反比例する。つまりアンテナを大きくすると一度に見ることができ
る視野が狭くなってしまう。ヘリオグラフでは太陽面上のどこでフレアが起こっても見逃すことのない
ように、太陽全面を常時観測する。このためヘリオグラフではアンテナの口径を 80cm と小さくして、
視野を太陽視直径の約2倍にしている。
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3. 太陽全面を常時観測するというが、84台のアンテナは少しずつ異なる方向を向いているのか。
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各アンテナは同一の方向(太陽面の中心)を向いている。個々のアンテナが少しずつ異なる方向を
向いているのではない。各アンテナの視野には太陽全面が入っており、太陽全体を見ている。太陽面上
の細かい構造は、各アンテナで受信した電波を干渉させること(相関をとり、フーリエ変換すること)
によって二次元像として得られる。
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4. 84台のアンテナを一斉に太陽に向けるにはどうするか。
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アンテナ駆動制御用の計算機でその時刻の太陽の方位と高度を計算し、その結果をそれぞれのアン
テナの駆動制御装置に次々と送り、すべてのアンテナを一斉に太陽に向ける。
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5. アンテナを 0.2 mm の 精度で据付ける必要性は?
据付調整機構の役割、調整に要する労力・時間は?
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ヘリオグラフのような干渉計では、天体から来る電波がアンテナに到達する時間差を正確に知る必
要がある。例えば図のようにアンテナに到達する電波(波長18mm)の波頭を波長の 1/100 以内に揃えなけ
ればならない。従って基準となる平面からの誤差を0.2mm 以下の精度で84基のアンテナを据付け、基準
平面からの高低差(図中のX)を揃える必要がある。据付調整機構はアンテナの位置を測距・測角儀で測
定しながら 0.2mm の精度で据付け固定するために、アンテナの傾きと上下左右方向の位置を微調整する
装置である。この調整は一台あたり 4ないし5人で 4から8 時間を要する。
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6. アンテナを 0.2mm の精度で据付けても、その後動いてしまうのではないか。例えば地震があったらどうするか。
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アンテナ基礎は凍上線以下の地中深くの支持力の十分ある地層に乗せるか、硬い地盤に届くパイルを
打って固定されているので簡単には動かない。地震などでアンテナ据付位置がずれてしまった場合は、ア
ンテナの位置を測距・測角儀で測定しながら据付調整機構を用いて再度調整する。
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7. アンテナの据付誤差を観測から検出できないか。あるいはズレを補正することはできないか。
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ヘリオグラフによる太陽の観測では、アンテナの据付位置が正しいことを前提として太陽の二次元像
を合成する方法を用いている。従って、観測からアンテナ据付位置のズレを検出することは困難であり、
ズレを補正することもできない。
アンテナの据付誤差は点状の宇宙電波源から検出・補正することが可能であるが、このような電波源
のうちヘリオグラフのような小口径のアンテナで受信できるものは殆んどないので、この方法は使えない。
受信機系 (1)
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1. フロントエンドの役割は? なぜ気象条件の厳しい屋外に受信機の
一部を置くのか。観測棟内に受信機を一括して置けないのか。
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ヘリオグラフで受信する電波は 17GHz でありラジオ・テレビなどで使われている電波より 100倍高い
周波数である。このような高い周波数の電波は伝送ケーブル中で急激に減衰してしまう。従って各アンテ
ナに取り付けたフロントエンド箱の中に受信機の高周波部を設置し、ここで 17GHz の受信信号を低い周波
数(200MHz)に変換した後伝送ケーブルで観測棟に送る。このためアンテナに直結してフロントエンドを設
置する必要がある。
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2. 太陽の観測になぜ低雑音増幅器を必要とするのか。また、宇宙電波の受信機のように冷却する必要はないのか。
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ヘリオグラフのアンテナは口径が小さく太陽から受かる信号が弱いため、ある程度感度の良い受信機が
必要である。しかし一方、アンテナ数が多いことによる費用と保守の労力を考えると、冷却受信機を用いる
のは現実的ではない。従って、常温の受信機で現在の最高レベルの低雑音受信機(雑音温度 150度から200度)を使用する。
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3. 中央局発信号発生部 とフロントエンドの局発信号発生器 との役割・関係は?
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中央局発信号発生部は観測棟に設置され、安定で強力な基準信号(200MHz)を発生する。この基
準信号はケーブルを通して各アンテナに送られ、周波数の基準として使われる。一方、フロントエンドの局
発信号発生器はこの基準信号を受け取り2つに分け、第1および第2局発発生器に導く。第2局発ではこれ
を増幅するだけだが、第1局発では増幅した後この信号を用いて 16GHz の発振器を働かせる。
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4. フロントエンドを温度制御する理由は。
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フロントエンド箱はアンテナの下部にあり、屋外に設置されている。一日 8から16時間の観測中に 10な
いし20℃ 程度の温度変動がある。これを制御しないでおくと、温度変動に伴い低雑音増幅器の利得が変動し
たり局発発生器の位相安定回路が誤動作したりする。このように、低雑音増幅器、局発信号発生器の安定し
た性能を確保するためにフロントエンドは一定温度に保つ必要がある。
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5. 観測周波数を 17GHz とした理由は。
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周波数 1から30GHz 付近の電波(通常、マイクロ波と呼ぶ)は、フレアの発生機構の源と考えられる彩層およびコロナ下層から放射されているため、フレア発生のメカニズムを解明するには最も適している。このことは物理的には数100ガウスの黒点磁場と数100電子ボルトのエネルギーの電子が相互作用していることに対応している。しかし 17GHz より低い周波数では、フレア発生領域の表面部分しか観測できず、一方 17GHz より高い周波数では観測できるフレア数が急激に減少する。このような理由から、観測周波数を 17GHzとした。
受信機系 (2)
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1. 信号を増幅するのになぜ減衰器が必要なのか。また半固定減衰器と自動減衰器の2種類必要な理由は何か。
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ヘリオグラフの各アンテナで受信される太陽の電波強度は、静かな太陽の場合から大きなフレアが発生
した場合まで 数百倍も変化する。受信信号が高すぎると中間周波(数)増幅器が飽和し、正しいデータが得
られなくなる。従って、信号の強度をモニターして、フレアが発生した場合に自動的に減衰器を働かせた後
で補正する必要がある。また半固定減衰器は、周囲温度や部品の経年変化などによりアンテナ系ごとにバラ
バラに変化する受信機出力を一定レベルに保つために必要である。
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2. 時計の精度はどれだけ必要か。
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時計はヘリオグラフの各部の動作を同期させるためにある。この時計に必要な絶対精度は、天体の運行
スピードとそれに伴う干渉縞(フリンジ)の変化のスピード(これはヘリオグラフの東西基線の長さで決まる)で決定され、1/1000 秒となる。
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3. ウォルシュ関数パルス発生器とは何か。84系統の意味は。
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ヘリオグラフの 84台のアンテナで受信された信号は伝送ケーブルを通って観測棟に送られ、増幅器など
を経て相関器に導かれる。アンテナから相関器に至るこの経路上で混入する雑音や他のアンテナからの信号
の漏れ込みを除去するため、ウォルシュ関数と呼ばれるアンテナ毎に異なった(直交した)複雑な関数で信号に変調を加えて、経路の最終段階で復調して、信号だけを取り出す。この関数を発生させるのがウォルシュ関数パルス発生器である。関数のかたちがアンテナ毎に異なっている(直交している)必要があるので、84系統のパルス発生器が一式必要である。
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4. 受信機制御監視部の役割は? どの様な状態を制御・監視するのか。
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受信機制御の項目は、較正信号、減衰器などの各種スイッチの制御である。また受信機監視は、受信機
各部が正常に働いているかどうかを監視する。両者は相互に組合わさって、例えば監視部で受信機の異常が
発見されたならすぐさまその原因を知り、正常に復帰するための命令・動作を制御部から受信機に送るとい
う動作をおこなう。
受信機系 (3)
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1. 電波(信号)をディジタル信号に変換する理由は?
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ディジタル信号処理回路の方がアナログ信号処理回路に比べて装置の調整箇所が少なくて済み、相関器
などのように同一の回路を多数必要とするような部分においては装置調整費を含めた全体としての装置製作
費が格段に安価となる。また、外部雑音や外気温の変化などの装置に加わる外乱に対してディジタル信号処
理回路の方が安定である。なお、電波ヘリオグラフで用いる大規模な相関計算は、アナログ信号のまま処理
する回路によっては実現不可能であり、ディジタル技術の発展によって可能となったものである。
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2. なぜ莫大な数の相関器を要するのか。
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電波干渉計では各素子アンテナで受信された信号間の相関値を計算し、その値を元にして画像を合成す
る。短時間に鮮明な画像を合成するためには、多くのアンテナを用い、それらのアンテナで受信された信号
間の相関値をすべて同時に計算することが必要となる。電波ヘリオグラフの場合、像合成に必要な相関値の
数は13、940あり、これらを瞬時に求めるためには同数の相関器を用いて並列に相関値を計算する必要
がある。
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3. LSIに集積化する必要性は?
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莫大な数の相関器を適正な規模、抵消費電力、抵故障率で製作しようとすると、いくつもの相関器を小
さなICに集積する大規模集積回路(LSI)を使う以外にない。
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4. 強弱の大きい信号を1ビット化してしまうのはなぜか。
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電圧などのアナログ信号をディジタル信号つまり数値に変換する時には、通常は信号の強弱に応じて多
段階のディジタル信号(多ビット信号)に変換する。しかしながら、1ビット相関器では、信号がプラスかマイナスかの2段階のみのディジタル信号(1ビット信号)に変換した後、各アンテナ間の相関を計算する。
1ビット相関器は、多ビット相関器に比べ、回路が簡単で高集積化が可能、入力信号が大きく変動して
も計算誤差が小さいなどの長所を持っている。一方、1ビット化すると相関値は多ビットの場合の相関値と
は異なるが、補正を加えることにより、正しい相関値を得ることが容易に出来る。また、1ビットの場合
には、強弱の大きい信号を2段階にしか表わせないので感度が落ちる欠点もあるが、太陽観測の場合電波強
度が強いので、感度の劣化はそれほど問題にならない。
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5. データ積分装置の役割およびソフトウエアの内容は?
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データ積分装置は、相関器で計算された100ミリ秒毎のデータの1秒毎のデータへの圧縮、相関値と
信号強度の合成、時刻情報や装置の動作状態の情報などの相関データへの挿入等の電子計算機で実時間画像
処理を行う上で必要な前処理、および高速データ記録装置の制御を行う。ソウフトウエアは、データ積分装
置の動作手順を指示する制御回路の専用プログラムである。
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6. 高速データ記録装置と計算機(磁気ディスク、光ディスク)との関係は?
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高速データ記録装置は100ミリ秒ごとのデータ(相関情報)を記録する。このデータはデータ量およ
びデータ処理量が膨大であることから、実時間処理は行わず、特定の現象を詳細に解析する場合にデータの
一部を取り出して用いる。電子計算機はデータ積分回路で1秒毎に圧縮されたデータを取り込み、光ディス
クに記録する。このデータの一部を実時間処理し、太陽像として電子計算機に付属する画像表示装置に表示
し、また磁気テープ上に記録する。
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7. 環境監視装置ではどのような環境条件をモニタするのか、またその必要性は?(装置の状態にどのような影響を及ぼすのか)
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風向、風速、気温、地温、湿度、日照量を監視する。風向、風速、気温、湿度、日照量の変化は、観測
する電波の大気中での減衰量および屈折率を変化させ、観測データに誤差を生じさせる。地温の変化は、地
中に埋設した信号伝送ケーブルの長さを変化させ、観測データに誤差を生じさせる。このため、環境条件を
モニタし、それらの値に従って観測データに適切な補正を施すことが必要である。
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8. 主制御監視装置の役割および環境監視装置との違いは?
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電波ヘリオグラフは、装置の保守点検を用意にするために、アンテナ系、受信機系(1)、受信機系(
2)、受信機系(3)、データ収録処理系のそれぞれに独立の制御装置が組み込まれている。主制御監視装
置は、各系に取り付けられた制御装置を統括し、装置の起動・停止を含む観測スケジュールの管理や装置各
部の動作状態の監視を行う装置である。これに対し、環境監視装置は観測データに影響を及ぼす装置の周囲
の外部環境を監視するための装置である。
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9. ビデオ増幅器はなぜ必要か
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ビデオ増幅器とは、テレビの映像信号と同じような広い周波数帯域をもった信号を増幅する回路のことで
あり、A/D変換において変換精度を上げるために必要である。
伝送系
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1. ケーブルはなぜ地下に埋めるのか。空中または地上ではいけないのか。ミリ波干渉計のように共同溝は必要ないか。
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地中の温度変化は、地上の温度変化にくらべてその変動幅が非常に小さい。土質や気候にもよるが、地
下1.5mにおける1日あたりの温度変化はおおよそ0.1℃であり、地上での温度変化の10分の1から
100分の1以下である。したがって、ケーブルを地中に埋めることにより、ケーブルの伸び縮みによって
生ずる観測誤差を大幅に低減することができる。
電波ヘリオグラフの場合、地中に埋設するケーブルはトラフ内に納め、ケーブル自身に防湿処理を施すの
で、長期間(20年以上)埋設したまましておくことができる。このため、頻繁に交換する必要はなく、共
同溝を必要としない。この点については名古屋大学空電研究所において過去15年にわたる実績と経験があ
る。
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2. なぜ高性能ケーブルを必要とするか。
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信号を伝送するケーブルの長さが周囲温度の変化によって伸び縮みすると、合成される画像に歪みを生
じる。一方、各アンテナで受信された信号は非常に微弱なので、受信機において高い検出感度を得るために
はケーブル内での損失をできるだけ減らすようにしなければならない。以上から、温度による伸縮が小さく
低損失のケーブルが必要である。また、局発信号の変動は受信信号の安定度に最も強い影響を与えるので、
特に高性能である必要がある。
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3. 位相器用ケーブルの長さが、中間周波ケーブルおよび局発信号ケーブルの長さの半分になっている理由は?
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中間周波ケーブルおよび局発信号ケーブルは、各素子アンテナ間でのケーブル長の相対的な伸縮が観測
データに与える影響が大きいので、観測棟から各素子アンテナまでのケーブル長を等しくとり、周囲温度の
変化によるケーブル長の相対的な伸縮を小さくするように工夫している。これに対し、位相器用ケーブルは
ケーブル長の伸縮が観測データに与える影響が小さいので、観測棟から各素子アンテナまで最短距離で結ぶ
ようになっている。このため、位相器用ケーブルの長さは、短くて済んでいる。
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4. 各種信号の伝送を1本のケーブルで共用できないか。
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1本のケーブルに多数の信号を重畳して伝送する場合、各信号を分離する装置(周波数分別器)が必要
である。この装置は調整が難しく、この装置を通した後でも分離できずに残留している成分が観測データの
品質を劣化させる。以上から、各種信号を1本のケーブルで共用して伝送することは電波ヘリオグラフの性
能を大きく劣化させることになる。また、構成部品(特に能動素子)の点数が多くなり故障の発生率が大きくなる。
データ収録処理系
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1. 電波ヘリオグラフの出力データ量はどのくらいか。 膨大なデータをどのように記録し、保存するのか。
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通常のデータは、1秒毎にアンテナの組み合わせの数 3486(= 84 台のアンテナを2台ずつ組み合わせ
るときの組み合わせの数: 84 x 83 ÷ 2)の4倍、すなわち、13,940 データ出力される。一方、時間分解
の高いデータが、100ミリ秒毎に通常のデータとほぼ同じだけ、すなわち約 13,940 データ出力される。
1秒毎の通常のデータはCD-Rに保存する。2枚のCD-Rに1日分記録可能である。100ミリ秒毎の高時間分
解データは、編集してCD-Rに記録する。
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2. なぜ実時間で太陽像を処理・出力する必要があるのか。
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観測データの中から興味ある現象を見つけだすためには、一日の現象の全体を観察できるモニター画像
が必要である。このため、観測時間中にすべてのデータをモニター画像として表示できる状態にしておく必
要がある。観測時間外には、実時間で処理したモニター画像で見つけられた興味ある特定の現象(バースト
等)を選択し、1秒ごとに得られる通常データ(相関情報)および100ミリ秒ごとに得られる高時間分解
データ(相関情報)を更に詳しく解析する必要がある。
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3. なぜ高性能の専用計算機を必要とするか。ヘリオグラフで計算機の果たす役割はなにか。
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電波ヘリオグラフが高時間・空間分解能であることから、受信機から出力されるデータの量は多量であ
り、しかもそのデータはそのまま画像として表示することができないものである。また、瞬時瞬時の画像を
合成するためには複雑な画像処理が必要である。画像を合成するための処理は、電波ヘリオグラフの素子ア
ンテナ数が本来必要な数(約 570台)に対して約7分の1(84台)に抑えてあることから、不足するデータ
を補うために更に複雑になっている。
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4. 必要とするソフトウエアの特徴はなにか。それぞれの役割はなにか。研究者側で作れないか。
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(1)受信機から送られてくる多量の観測データを受取損ねることなく取り込み、CDーRおよび磁気ディ
スクに書き込む
。
(2)取り込まれたデータの一部を取り出して実時間で像合成し、表示装置に表示する。表示する画像は低
空間分解能太陽全面像と高空間分解能太陽部分像である。
。
(3)地球の自転運動を利用して太陽の詳細な画像を1日1枚合成する。
。
こららの処理のうち、(1)の処理は受信機と計算機を直結することが必要なことから、通常、研究者が用
いている科学技術計算用プログラム言語(フォートラン言語など)とは異なる特殊言語でプログラムを記述
する必要がある。また、計算機の内部構造に熟知する必要がある。このため、研究者側で作成することがで
きない。(2)および(3)の処理も、(1)の処理に影響を与えることなく実行させるためには、計算機
の基本ソフトウエアを含めて計算機システム全体を実時間処理用に調整しなければならないこと、また、こ
れらの全てのソフトウエアは効率を最大とすることを目的とし、作成後の変更は考慮する必要はない。この
ような場合にはその道の専門家がソフトウエアの作成を行うのが常識である。これ以外に観測時間外に使用
する詳細解析のためのソフトウエアは研究者が作成する。
Last updated
E-mail:
service@solar.nro.nao.ac.jp