太陽に関する基本的な知識

• 太陽電波
  　太陽から放射されている電波。地上からは、目で見える太陽表面（光球面)のほか 上空の希薄で高温の大気層から放射されている電波が観測される。

• マイクロ波
  　電波を振動数または波長で分類したときの名称の１つ（下図参照）。マイクロ波は センチ波と呼ばれることもある。衛星通信や衛星放送などに利用されている周波数帯。

• Ｘ線
• 軟Ｘ線
• 硬Ｘ線
• γ線
  　電波 (メートル波、マイクロ波、ミリ波)、赤外線、光、Ｘ線、γ線、などはすべて 電磁波であり、波長あるいは周波数の違いで分類されたものである。Ｘ線は目に見える 光よりも振動数がさらに１桁以上高い波。γ線はＸ線よりも振動数がまたさらに１桁以 上高い波である。軟Ｘ線、硬Ｘ線はＸ線の一種であり、Ｘ線を振動数で細かく分類した ときの呼び方である。それぞれの電磁波の関係を模式的に書くと以下のようになる。

        1Å(オングストローム)=0.0001μm               1GHz(ギガヘルツ)=1000MHz
  
        1μm(ミクロン)       =0.001mm(ミリ)           1MHz( メガヘルツ)=1000kHz
  
                                                      1kHz( キロ ヘルツ)=1000 Hz
  
       長い ──────────　波長　────────── 短い       
     （低い ────────── 周波数 ────────── 高い）     
  
  　　　　   1m      10cm      1cm       1mm      0.1mm     10μm     1μm
          (300MHz)  (3GHz)   (30GHz)   (300GHz)
  
      ─────────────────────────────────
     　メートル波      マイクロ波(センチ波)       ミリ波  　サブミリ波　 　
  
                          短センチ波
  
      　1μm         1000Å    　　　100Å 　　　     10Å   　       1Å    
      ─────────────────────────────────
          光(可視光)   紫外線　　　　Ｘ線           γ線
  
         赤     紫               軟X線  硬X線
  
  

• 電波干渉計
• 多素子電波干渉計
  　電波望遠鏡の一種。多数の素子アンテナを並べ、各アンテナで受信した電波の干渉（ ２つの信号がお互いに強めあったり弱めあったりする現象）を利用して天体像を合成す るしくみの電波望遠鏡を電波干渉計という。素子アンテナ数が多い干渉計を多素子干渉 計という。電波ヘリオグラフも電波干渉計であり、８４台のアンテナ全体で口径約２５ ０ｍの１つの巨大な電波望遠鏡として機能する。

• 偏波計
  　天体からの電波の強さを測定する装置を電波強度計と呼ぶ。偏波計は電波強度計の一 種であり、電波の偏向成分を分離してはかることができるという特徴をもつ。

• 空間分解能
• 解像力
  　細かい構造を識別できる能力。分解能と略すばあいもある。天文学では、角度で表わ すのが普通である。電波ヘリオグラフの空間分解能は約１０秒角であり、太陽の直径（ 太陽の視直径は約３２分角）の２００分の１程度の大きさの構造を分解できる。

• 超合成
  　電波干渉系で天体を長時間に渡観測すると、天体の位置（赤緯）によるが、天体が干渉 計の基線から見て回転する。これは逆に天体から干渉計を見ると、基線が時間と共に回 転する。従って、一つの基線が時間が経つと新しい基線となることを示している。この ように小数のアンテナ対（基線）が地球の自転により新しいアンテナ対（基線）を作り出すことを利用して高画質の電波像を撮影することを（地球回転を利用した）超合成という。この手法は宇宙電波で広く利用され、ほとんどの電波干渉計はこのタイプである。太陽電波では対象が時間変化しない、或は、緩やかな場合に限ってこの方法がは利用される。活動域、コロナホール、コロナ輝点、大規模構造、ダークフィラメント（暗条）等は時間変化が緩やかな例である。

• フーリエ変換
  　レンズ或は反射境でどうして像が出来るかを光学の原理にたちかえって考察すると、 像はレンズ（反射境）の面に取ることが出来るあらゆる２点間の相関をまず求めて、これらの相関量にフーリエ変換という数学の操作をすることによって求められていることになる。相関を求めるということは平たく云うと、どういう縞模様があるかということに相当している。従って、フーリエ変換はどんな縞模様を組み合わせるとどういう絵になるかを示す手続きである。

• フレア（ｆｌａｒｅ）
  　太陽面上の一部に明るく輝く部分が爆発的に現われる現象。フレアーでは電子やイオ ンの加速あるいはガスの加熱といった様々な高エネルギー現象が観測され、観測的に最も華々しく、また太陽物理学的にも最も興味ある現象の１つである。電波ではフレアーのことをバーストと呼ぶ。

• 太陽活動極大期
• １１年周期
  　太陽面上に見える黒点数、フレアーの発生頻度などは１１年の周期で増減を繰り返す ことが古くから知られている。黒点や羊班の数、フレアーの発生頻度などが極大になる ときを太陽活動極大期という。次の太陽活動極大期は２０００年頃と予想される。通常 太陽活動の長期の傾向を議論するときは相対黒点数の１２ヶ月平均値を用いる。しかし、月平均値でみると下の3750MHzのフラックスのように月毎に激しく変化していることが判る。従って、実際にいつの時点が極大かを言い当てることは困難で、また、意味がない。

• 活動領域
• 黒点
  　太陽を可視光で観測すると、その表面に黒い点状の領域が見える。この領域が黒点である。黒点からは強い磁力が出ている。黒点が見える場所は太陽大気の気圧や温度が激しく変動している領域であり、しばしばフレアが観測される。このことから、黒点が見えるような領域は活動領域と呼ばれている。

• シンクロトロン放射
  　高エネルギーの電子による電波または光の放射機構の１つ。強い磁力（磁場）により高速で運動する電子の軌道が曲げられて、磁力線に巻つくように円運動することにより電波放射が起きる。このことから電波ヘリオグラフを用いてフレア電波像を高分解能観測することからフレアの磁場の形状を知ることが出来る。

• 粒子加速
  　電子またはイオンのガスを集団で一定方向に運動する速さを増加すること。粒子加速により高速で移動する電子群が異なる速度をもつガスと遭遇（衝突）すると、電気力によりその軌道が曲げられて（等速直線運動でなくなるために）Ｘ線を放射する。衝突により高速粒子はエネルギーを放出してガスの加熱が起こる。また、高速の電子が強い磁力線に巻きついて運動するとシンクロトロン放射が起こる。この場合にも等速直線運動でなくなるために電波放射が起こるのである。

• プラズマ
  　原子が電離して電子とイオンに分かれ、独立に動き回ることができるような状態をプラ ズマ状態と言う。プラズマ状態の気体をプラズマという。

• コロナ
• 彩層
  　いずれも太陽の大気層の名称。彩層は普段われわれが目で見る太陽表面（光球面という） のすぐ上にある密度が希薄な大気層のこと。コロナは彩層の外側に広がる高温の大気層であ り、密度は彩層よりもさらに希薄である。

• ＳＭＭ
• ひのとり
• ようこう
  　いずれも、太陽観測衛星の名称。地上では観測できないＸ線、γ線の観測を主体とした機 器を搭載している。ＳＭＭは前太陽極大期に打ち上げられたアメリカの衛星、ひのとりはＳ ＭＭより少し遅れて打ち上げられた日本の衛星である。ようこうは前の太陽活動期に宇宙科 学研究所により打ち上げられ現在も観測を続けている。

• クエーサ（準星）
  　星のように見えるが星ではないことから名付けられた天体。われわれの銀河からはるか遠 くにある銀河と考えられており、、これまでに数多く見つかっている。非常に遠くにあるに も関わらず非常に明るい天体であり、電波強度も強い。電波強度が時間変化しているのが知 られている。

• 超新星
  　恒星はその内部で核融合反応を行いながら輝いているが、その燃料を燃やし尽くしてしま ったときに急激な自己崩壊現象を示すことがある。この自己崩壊現象が超新星爆発であり、 この現象を起こしている星を超新星という。超新星爆発では、一瞬にして莫大なエネルギー や物質が宇宙空間にむかって放出され、星は異常に明るくみえる。

• パルサー
  　心臓の脈動（パルス）のように規則正しい間隔で電波や光の明滅を繰り返す星。繰り返し 間隔は数ミリ秒から数１００ミリ秒である。

• ＶＬＡ
  　アメリカ国立電波天文台が所有する電波望遠鏡の名称。ニューメキシコ州ソコロにあり、 直径２５ｍのアンテナ２７基を１つの腕が２１ｋｍあるＹ字形のレールの上に配置した大型 の電波干渉計。地球回転を利用した超合成法により実質的なアンテナ数を増やして、宇宙電 波観測を行う。太陽電波の観測にも用いることができるが、太陽フレアのような速い変動現 象では超合成法が使えない。このためアンテナ数が不足し、良い画質が得られない。

• シベリア太陽電波望遠鏡
  　ソ連の太陽電波観測用電波望遠鏡の名称。２５６素子の小口径アンテナからなる大型の電 波干渉計。観測波長帯は６cmであり、解像力は約３０秒角で電波ヘリオグラフの１０秒角より劣 る。最近２次元像が得られるようになった。