M08a

電流シートの形成機構

○柴崎 清登(国立天文台野辺山)

 磁力線の向きが空間的に急激に変化するためには、集中した電流が必要である。逆向きまたは大きな角度をなす磁力線群(たとえば磁気ループ)が複数近接して存在するためには、それらの間にシート状の電流が流れていなくてはならない。電流は一般的に真電流と磁化電流に分けられる。荷電粒子の集まりであるプラズマの場合、ラーモア運動の成分は磁化電流に、磁力線に沿った流れの成分は真電流となる。プラズマが一様に分布する場合磁化電流は打ち消しあうが、圧力勾配がある場合には打ち消しあえず残る。MHD的取り扱いではこれらの電流は区別されない。

太陽大気中で観測される軟X線やEUVループは、磁力線と直角方向にプラズマの圧力勾配があるということを示している。ループ内の圧力の高いプラズマは、その周りを筒状にとりまく磁化電流とループ磁場によって生ずるアンペアの力によって閉じ込められている。熱運動の方向はランダムであり、磁力線に沿った真電流は発生しない。ふたつの磁気ループがお互いに押し付けあった場合、圧力勾配が大きくなり電流シートが発達する。磁化電流が荷電粒子のラーモア運動による磁気モーメントに起因することから、この電流にはオームの法則を適用することができず、異常抵抗によって散逸させることはできない。よって、磁化電流の場合、電流シート内に発生した異常抵抗によって磁気再結合が発生するという筋書きを適用することはできない。散逸させるためにはプラズマ不安定性などによって圧力勾配をなくさなくてはならない。

真電流の場合は、異常抵抗によって電流が流れなくなり磁気再結合が期待されるが、その前にどうやって継続的にシート状の真電流を駆動するかという重大な問題が残っている。