野辺山電波ヘリオグラフ
野辺山電波ヘリオグラフ(NoRH)は、
太陽観測専用の電波望遠鏡
です。ヘ
リオは太陽を、グラフは撮像装置を意味します。望遠鏡とはいって
も実際には、直径80cmのパラボラアンテナ84基が東西490m、南
北220mのT字型の線上に配置されたものです。1990年度から2
年間で、総工費18億円をかけて建設し、1992年4月に最初の太陽
電波画像の撮影に成功し、同年6月末より毎日8時間の連続観測を
行っています。
観測周波数
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17GHz(左右両円偏波)34GHz(強度のみ)
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観測視野
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太陽全面
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空間分解能
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10秒角(17GHz)5秒角(34GHz)
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時間分解能
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0.1秒(活動時)1秒(静穏時)
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野辺山電波ヘリオグラフは干渉計なので、取得したばかりの生データは
アンテナ組みごとの相関値のあつまりです。これは太陽の明るさの空間分布を
Fourier分解したものにあたります。したがって解析するにはこのデータから
画像を合成する必要があります。しかし実際は、
科学的成果を効率よくあげるために画像・データベースなどを
自動的に毎日作成しウェブにて公開しています。また画像合成や解析用の
ソフトウェアも同時に公開して研究を支援しています。
またウェブで公開している画像などは学校・大学・社会人教育機関での
教育にも使って頂ければさいわいです。
太陽は我々の生活のエネルギー源であり、一方、天文学にとって
はその表面の活動が詳細に観測できる唯一の恒星です。活動時間は1
秒以下のものから10年以上にわたるものまでさまざまです。電波
ヘリオグラフは太陽表面の電波の明るさを写真として捉えること
ができます。連続して高速に撮影することができるので、ビデオ装
置といった方が適切かもしれません。光やX線による観測と協力し
て、太陽の表面で発生するさまざまな現象の観測を行っています。
太陽活動は11年の周期で大きく変動し、西暦2000年にその極大
に達します。黒点の数が増え、その周りで発生する爆発現象(太陽
フレア)の頻度も極大になります。爆発の際にエネルギーの高い粒
子が作られ、それが黒点磁場に巻き付いて非常に強い電波を発生し
ます。この電波を捉えて、高エネルギー粒子の発生機構をつきとめ
ることを目的に電波ヘリオグラフは建設されました。
建設されてから初めて、太陽は極大期を迎えつつあります。
太陽の高エネルギー粒子を観測する衛星「HESSI」
が2000年に米国で打ち上げられ、さらに既に8年以上太陽の観測
を行っている宇宙科学研究所の「ようこう」衛星とともに、太陽フ
レアの謎解きができるものと期待しています。
参考文献
花岡庸一郎 「太陽フレアを電波で解明する」,
天文月報, 88巻5号, 193-198, (1995)
Nakajima et al. "The Nobeyama Radioheliograph",
Proc. of the IEEE, 82, 705, (1994)
Takano et al., "An Upgrade of Nobeyama Radioheliograph to a Dual-Frequency
(17 and 34 GHz) System" in
"Coronal Physics from Radio and Space Observations,
Lect. Notes Phys.", (Belrin: Springer-Verlag) 183 (1997)
"The Nobeyama Radioheliograph
-- A Collection of Papers on Initial Results and Instrumentation",
NRO Report 357 (1994)
"New Look at the Sun with Emphasis on Advanced Observations of
Coronal Dynamics and Flares", Proc. of Kofu Symp.
NRO Report 360 (1994)