日本時間2012年6月6日に、金星が太陽の前を横切る 金星の太陽面通過が起きました。 野辺山電波ヘリオグラフにとっては, 2004年6月8日以来2回目の金星の太陽面通過の観測となりました。 2004年の金星の太陽面通過と同様に、 当日は野辺山ではお天気が悪く可視光望遠鏡や肉眼での観測ができませんでしたが、 電波でみる金星の太陽面通過をほぼリアルタイムにお届けしました。
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当日の野辺山は右の写真にある通り曇りでしたが、 電波観測の利点を生かし、 上のムービーにある通り金星の太陽面通過を観測する事ができました。 野辺山電波ヘリオグラフの空間分解能は約10秒角であり、 朝方はさらに分解能・画質共に悪くなるため、 金星の形が丸くない画像があります。 |
当日の野辺山観測所の天気 |
国立天文台の暦計算室では、 任意の地点での金星の太陽面通過の予報を計算するサービスをホームページ上で提供しています (国立天文台・暦計算室 )。 これによると野辺山太陽電波観測所での金星の太陽面通過は、以下のように予報されていました。
時間 [日本時間] | 高度 [度] | 方位角 [度] | 角距離 | コメント |
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2012年6月6日 07:10:51 | 30.0 | 82.5 | 975 | 外蝕の始め |
2012年6月6日 07:28:27 | 33.6 | 84.8 | 917 | 内蝕の始め |
2012年6月6日 10:29:42 | 69.0 | 124.1 | 548 | 最小角距離 |
2012年6月6日 13:30:06 | 63.6 | 247.1 | 917 | 内蝕の終り |
2012年6月6日 13:48:39 | 60.3 | 252.0 | 975 | 外蝕の終り |
野辺山電波ヘリオグラフは、 東西490m・南北220mのT字型に配置された84台のパラボラアンテナで太陽からの電波を受け、 コンピュータ上で84台で受けた太陽電波の信号を基に太陽の画像を合成する、 太陽専用の開口合成型電波望遠鏡です。 通常は、 太陽の高度が十分高くなり精度の良い観測ができる日本時間午前7時45分から午後3時30分の間 太陽を観測していますが、 当日は太陽面通過を最初から観測するため日本時間午前7時から観測を開始しました。
電波による日食観測の最大の利点は、雲や雨の日でも太陽を観測する事ができる点です。 我々が目で感じる事のできる光(可視光)は地球の大気中の雲により遮られるため、 雲越しに太陽の姿を見る事ができません。 一方、野辺山電波ヘリオグラフが観測する周波数17GHzの電波(マイクロ波)は雲による影響が非常に小さいため、 雲があったとしても電波による太陽の姿を地上から見ることができます(下図:左)。 2004年6月8日に起きた金星の太陽面通過では一日中雨でしたが(下図:中央)、 野辺山電波ヘリオグラフはこの利点を生かし、太陽の前を通過する金星の姿を観測する事に成功しました。
2004年6月8日の野辺山太陽電波観測所 | 2004年6月8日の太陽電波画像 左下に見えてくる黒い点が金星の影 |
2012年6月6日更新
© 2012 National Astronomical Observatory of Japan
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